季節の移ろい | 医療法人南谷継風会 南谷クリニック 岡町院

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COLUMN

季節の移ろい

2015.05.22コラム

 心に浮かぶよしなしごとを綴っていくことが好きです。医学には本来理系の頭が必要なのですが、私はなんと数学が苦手でした。英語と国語が大好きで文系に進んでいた方がよかったのかもしれません。かといって小説家になれるほどたくさんの本も読んでいませんし、文章力も語彙力も十人並みだと思っています。

ただ文章を書くのは好きで時々このような投稿に時間を費やしています。前置きが長くなりましたが、今私の目の前に滋賀湖西、蓬莱山系の山並みが広がっています。私はこのような山々を眺めながら開業以来これまで滋賀から大阪豊中まで車で通勤しています。春夏秋冬、季節ごとに山の景色はその趣を変え、私の道中を慰めてくれます。今は緑、山を全体的に眺めると、常緑樹の濃い緑に混じって、点状に絵具を塗りたくったように、燃えるような新緑、浅い緑色が広がっています。

この緑は雨によってその存在を刻刻と際立たせていきます。緑、木々の存在を知らしめてくれる大切な存在、それが雨です。雨の偉大な力はこの時期、一雨ごとに変化していく山の景色に表現されます。皆さんは一雨ごとに季節が移っていく様をご存知でしょうか?わざわざ山まで行かなくとも街並みの中でもそれを感じることができます。少し注意して身の回りの景色に目を移してください。ビロードのような緑、目に染みるばかりの鮮やかな緑、燃えるような緑、緑を表現する文句はたくさんありますが今はまさに新緑の季節、燃え立つような緑に生命力を感じ、胸の内に何かをしようという情熱が沸き起こります。この日々の変化を感じ取ることができるか?それを感じとる心が大切です。

生活が便利になり季節を感じる機会が少なくなってきました。夏は冷房、冬は暖房が常備され暑さ寒さを厳しいものとして身体にして感じることがなくなってきました。ハウス栽培やバイオ技術で季節感のなくなってきた、甘くておいしい野菜や果物。季節感あふれる青臭くて形の悪いトマトや、まだ青くて酸っぱいミカンなどは嫌われ、八百屋の店頭から姿を消しています。食においても季節特有な動きを感じる機会がなくなっているように思います。ちょっとした季節の移ろいを感じること、それに感動する気持ちを持つことは、日常のちょっとした変化にも心が向き、注意することができます。

私たち医療現場の人間にとってこの心の持ち様はとても重要なことです。患者さんのちょっとした変化、それが身体であれ、心であれそれを感じ取るアンテナを持つ必要があります。このアンテナは人に言われて養えるものではなく、日常のちょっとした変化を感じ取る心があれば自然に身につくものと考えます。アンテナを磨く、心を研ぎ澄ます。日常生活の中に、身近にあるちょっとした出来事に敏感になる。物事に、心を遣る。思いを遣る。それが思いやりの根源です。これから梅雨が終わりしばらくすると本格的な夏が到来します。

 私は夏をまず蝉の声で実感します。蝉の生態も私の子供の頃とずいぶん変わってしまったのですが、昔はまずニイニイゼミが鳴き始め、続いてアブラゼミの大合唱です。昨今はクマゼミの大合唱なのですが。また蝉についてもゆっくりお話ししたいと思います。季節の移ろい、それを感じ取ることは人にやさしくなるためにとても重要です。人と一緒に暮らしていくためのとても大切なことではないかと思います。皆さんもここでまた一度じっくり季節の移ろいを感じとってみては如何ですか?今はまさにその時です。

南谷クリニック副院長 南谷哲司

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